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導入事例のご紹介<ハンディターミナル>

東日本旅客鉄道株式会社様

2005年10月4日掲載

車内補充券発行機

このたび、東日本旅客鉄道株式会社(以下JR東日本)では、車内で切符(乗車券・特急券など)を発行する「車内補充券発行機」のリニューアルにともない、車掌用端末として、法人向けモバイル端末<カシオペアDT-10>を4,500台導入しました。
今回のリニューアルでは、切符の発行だけでなく、新幹線自動改札機の入場情報の確認が、<カシオペアDT-10>1台で行えるようになり、車掌業務の効率化や乗客へのサービスの向上が可能となっています。
車掌用端末の選定に際して<カシオペアDT-10>の評価された点、また、導入後の効果、さらに今後の展開について、プロジェクトの責任者であった得永氏(JR東日本鉄道事業本部運輸車両部課長)にお話しを伺いました。

  • 新幹線「はやて」E2系1000番代
    新幹線「はやて」E2系1000番代

  • 特急「あずさ」E257系
    特急「あずさ」E257系

導入の背景

コストダウンと拡張性を考慮、初めてWindows OS搭載の携帯端末機を採用

JR東日本鉄道事業本部 運輸車両部課長 得永諭一郎氏
JR東日本鉄道事業本部
運輸車両部課長 得永諭一郎氏

従来、車内での切符の発行は、手書き、または切符に穴を空けるなど大変面倒な作業を行っていました。そこで業務の効率化を目指し、「車内補充券発行機」を導入したのが15年前の平成2年。その後は段階的にリニューアルを実施、今回で同システムは4代目となります。
今回、注目すべきは車内補充券発行機、つまり車掌用の端末を刷新したことです。
なぜ、端末にWindows OS搭載の携帯端末機を採用したのか、その理由について得永氏はこう話します。
「実はリニューアルに際して、従来の専用機をバージョンアップしていくか、または汎用性の高いWindows OS対応のハード、ソフトに替えて、インターフェイスまで刷新するか、2つの選択肢を検討しました。その結果、システムの拡張性、開発や運用面でのコストダウンという2点で、汎用性の高いOSの方が勝っていると判断しました。」このように、将来への展開を見据えた結果、Windows OS搭載の携帯端末機に軍配が上がったのです。

DT-10の特長である、高い視認性と長時間運用、そして耐環境性能を評価

カシオペア DT-10
カシオペア DT-10

実際の使用状況を考えると、車掌用端末の機能には、汎用性だけではなく、業務用端末としての使い勝手と耐久性が重要であったことについて得永氏はこう話します。
「リニューアルに際しては、分かりやすい大きな画面の中に、操作系の機能を全部入れてしまおうと考えました。さらに『一度乗務を開始すると充電可能な箇所へ長時間戻らない』という車掌の業務特性から、電池寿命の長さも大きなポイントでした。また、屋根のない無人駅のホームで使うケースも想定し、耐久性や防水・防塵性能も考慮しました。そうした点を踏まえて、当社のグループ会社でシステムインテグレーションを手がけている株式会社ジェイアール東日本情報システムと共同で検討し、判断するに至りました。」
そうした検討の結果、3.7型カラーTFT液晶の大画面による高い視認性、約27時間稼動の大容量電池、落下強度1.0m、雨やホコリにも強いJIS防沫形(IP54)準拠の耐環境性といった機能が高く評価され、<カシオペアDT-10>が選ばれたのです。

切符を売るためだけではなく、様々な業務にも使える端末に

JR東日本では、開発当初から切符を発行するだけではなく、様々な業務にも使用できる端末にしたいという意図がありました。
1台の端末で複数の業務が行えるようになると、車掌業務はどのように変わるのでしょうか。
「車掌の仕事は、ドアの開閉や安全の確認、車内改札や切符の発行など多岐に渡ります。しかも車掌は端末と一緒に動かなくてはなりませんから、業務ごとに専用の端末を持たせるには限度があります。しかし、端末1台で複数の業務がこなせれば、作業も楽になり業務効率が向上するだけでなく、お客様へのサービスもきめ細やかになり、業務の質が向上します。」
さらに、コストダウンについて得永氏はこう続けます。
「JR東日本の場合、新幹線、長距離特急、短距離特急、地方ローカル線の普通列車など、乗務するエリアや列車によって求められる操作性などの特徴が様々で、それぞれに専用機があった方が便利だという考えもありますが、それではコストがかかり過ぎます。しかし、<カシオペアDT-10>であれば、ソフトウェアを工夫すればどのエリアや列車に対しても最適化できるので、余計なコストがかからない。そのような点も採用のポイントになったのです。」

システムの内容

モバイル環境で座席データを取得、車内改札や駅での切符販売が可能に

JR東日本の新幹線では車内改札レス
JR東日本の新幹線では車内改札レス

リニューアルで最も大きく変わった点は、切符の発売機能が大幅に向上したことです。
車掌は、最新の運賃・料金データがダウンロードされた端末を携帯しながら車内を移動し、精算と発券を同時に行います。また、JR東日本の新幹線では、新幹線自動改札機を通過した切符のデータをモバイル環境で取得し、車内改札を省略するサービスを実施していますが、この端末を車内補充券発行機<カシオペア DT-10>と一体化しました。
一方、発券に使用するプリンタは2種類。車内での発券用には印字速度を重視したサーマル紙用プリンタ、駅での発券用には駅の「みどりの窓口」で発売しているものと同じサイズで自動改札機を通過できる磁気券用プリンタを使用し、ともにBluetooth無線通信によって出力する仕組みになっています。

システム概念図

導入効果

インターフェイス、操作性の改善により使いやすさと業務効率の向上を実現

画面をスクロールさせてエリア全体を表示

画面をスクロールさせてエリア全体を表示

インターフェイス、操作性の改善により使いやすさと業務効率の向上を実現

リニューアル後の反応について伺いました。
「通常業務にかける時間が短縮されたおかげで他の業務にあたる時間に余裕ができ、業務のスピード化、サービスの向上が実現できました」。
一方、車掌用端末が刷新されたことによる、操作上の不安など現場にはなかったのでしょうか。
「インターフェイスが大幅に改善されたこともあって、現場からは使いやすくなったという声をよく聞きます。車掌用端末は、駅で使われている販売機器の操作に近づけて開発しました。実は、当社の車掌の約半数は駅員経験があるので、操作への慣れは予想以上にスムーズでした。」
と当初の狙い通りだったことを話します。その一方では、「JR東日本の営業エリアは、日本の鉄道会社の中で最も広いのです。エリア全体の地図を画面に入れて操作させたいという希望を、今回はなんとか実現したいと思っていましたので、最適な文字の大きさ、パネルの明るさ、色の使い方、画面の切り替えなど、実に様々なインターフェイスのパターンを考え、試行錯誤を繰り返しました。」
こうした現場の期待に応えようとする苦労が、インターフェイスの飛躍的な向上につながったといえます。

DT-10の採用によって長時間の運用を実現する一方で軽量化も実現

プリンタと一体型で使用する場合ソフトケースに収納する

端末とプリンタを分離しての使用も可能

(左)プリンタと一体型で使用する場合ソフトケースに収納する
(上)端末とプリンタを分離しての使用も可能

プリンタは松下電器産業株式会社製

リニューアル後は、車掌用端末の軽量化も好評でした。現場で求められる長時間運用を可能にするには、電池の容量を大きくする必要がありますが、それでは端末本体が重くなってしまいます。
「端末の軽量化も大きなテーマでした。この問題を<カシオペアDT-10>はクリアしてくれました。」と、得永氏はさらに続けます。
「車掌用端末はプリンタと同時に使用しますが、Bluetooth無線通信を使用しているので、プリンタだけをウエストベルトに装着するなど、分離して使うこともできます。その際、手の中の端末は従来機に比べ半分以下(約290g)という軽量化が実現したのです。」

電子マネー決済や、運行状況の配信など、車掌向けの総合端末に拡張したい

電子マネー決済や、運行状況の配信など、車掌向けの総合端末に拡張したい

今後「車内補充券発行システム」はどのように活用していくのか、得永氏は将来の展望についてこう話します。
「通信環境を強化させ、たとえば、お手伝いが必要なお客様の乗車駅名、降車駅名のようなバリアフリーに関する情報伝達など、様々なリアルタイム配信を可能にしたいです。さらに中長期的にはSuicaとの連携も重要な課題です。」
このようにJR東日本による「車内補充券発行機」は、単なるリニューアルにとどまらず、今後エリア内での通信環境の拡充を図り、将来的には車内総合情報システムとして発展させていくことが期待されています。

お客様PROFILE

社名
東日本旅客鉄道株式会社
East Japan Railway Company
本社所在地
東京都渋谷区代々木二丁目2番2号
設立
1987年4月1日
資本金
2,000億円
社員数
67,710人(2005年4月1日現在)
主な諸元
線区数 70線区
営業キロ 7,526.8km
駅数 1,699駅
列車本数 12,478本(一日あたりの列車本数)
車両数 13,197両
輸送人員 1,606万人(2004年度一日平均輸送人員数)

(2005年3月31日現在)

社名
株式会社ジェイアール東日本情報システム
JR East Japan Information Systems Company
本社所在地
東京都渋谷区代々木二丁目2番2号
JR東日本本社ビル9F
設立
1989年11月24日
資本金(構成)
5億円(東日本旅客鉄道株式会社100%)
売上高
546億円(2004年度)
社員数
1,296名(2005年6月1日現在)
事業内容
  1. 情報処理業務の受託
  2. 情報提供サービス
  3. 情報処理システムの開発及び運用

【導入製品・ソリューション】

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